BECOME HAPTIC DESIGNER
結 果 発 表
HAPTIC DESIGN AWARDの受賞作品を発表します。
「HAPTIC DESIGNER」たちの作品をご覧ください。
受賞作品展示会開催! 2017/3/26 - 4/2 @FabCafe Tokyo
稜線ユーザインタフェース
本作品は新しいスイッチインタフェースのコンセプトプロトタイプである。
このインタフェースは、立体的な段差や障壁などの知覚的稜線によって区切られた、
二つ以上のタッチセンシング領域によって構成されている。
そして、既存のスイッチのように「ボタンを押す」、「指定された面を触る」といった操作ではなく、
「指をスライドさせて知覚的稜線を超える」という動作をスイッチ及び触覚フィードバックの生成源として
利用する。これにより、不意の誤動作が起こりにくいという特性の他に、
単純な構造による高い造形自由度を持たせることができた。
本作品は、立体造形による視覚と触覚の両面からの情報デザインの世界を開拓する。
受賞者の声
公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科 准教授
稜線ユーザインタフェースは、新しいスイッチインタフェースのコンセプトプロトタイプです。既存のスイッチのように「ボタンを押す」、「指定された面を触る」といった操作ではなく、「指をスライドさせて知覚的稜線を超える」動作を、スイッチ及び触覚フィードバックの生成源として利用します。これにより、不意の誤動作が起こりにくいという特性の他に、単純な構造による高い造形自由度を持たせることができました。本作品は、立体造形による視覚と触覚の両面から、身体と環境を結びつける新たな情報デザインの世界を開拓します。
作品部門 | 積み紙(tsumishi)
赤ちゃんを抱っこする時を思い出してください。
”積み紙”は、そんな風に自然と優しく持ってしまう和紙の”つみき”です。
人間に限らず、赤ちゃんの頃は体が小さく目が丸くて大きい動物が多く、それらを可愛い、
守りたいと思う気持ちは本能として備わっているそうです。その為、皆赤ちゃんに対して優しく、
且つ緊張感を持った丁寧な動きになります。
その習性から着想を得て、敢えて繊細で壊れやすいものを作りました。
積み紙は中が空洞で、光にかざすと透けて見えます。
また、様々な種類の和紙を使用しており、色や触り心地の微妙な違いを楽しめます。
ものを大切に扱うことや、日本の伝統文化を受け継ぐための1つのツールとなれば幸いです。
受賞者の声
東京藝術大学大学院
何かを作る上でターゲット設定は非常に重要ですし、必須の場面も多々あります。しかし、それを先に決めることがデザインの"やり方"のようになっている気がして、何となく違和感を感じていました。
嬉しい、悲しい、楽しいなど、どこで感じるかはそれぞれですが、感情は誰もが共通して持っているものです。モノに触れることだってみんなできます。
今回は人間や動物の習性をヒントに制作をしたのですが、積み紙という物の境界線に触れることによって、誰に向けてなどは関係無く、そこにいる人の気持ちを動かすことのできるような作品を目指しました。
このような考えで作ったものを評価していただき大変光栄です。ありがとうございました。
アイデア部門 | LIP SERVICE
テクスチャ・シガレット「LIP SERVICE」は、伝統的な人間の嗜好品であるタバコを、
唇へのHAPTICな刺激という観点でアップデートする試みです。
10種の異なる質感素材で包むことで、唇で感触の違いを味わえるタバコをつくりました。
これまで人は、タバコを中身の葉の違いで選んできました。
一方でその葉を包むペーパーはどれも画一的で大きな違いはありません。
タバコが触れる唇は、人間の身体の中でも最も敏感な部分のひとつです。
そこに様々なテクスチャが触れることで、いつものタバコの吸い心地を繊細に変化させ、
常に新鮮なリフレッシュを与えてくれると考えました。
受賞者の声
電通 コミュニケーションデザイナー/Panasonic プロダクトデザイナー
普段はタバコを吸わない私たち2人が考えた、タバコの新しいあり方です。LIP SERVICEは伝統的な嗜好品のタバコを、唇へのHAPTICな刺激も味わえる「テクスチャ・シガレット」へとアップデートする試みです。タバコは1日の中で楽しむ頻度が多く、繊細な口元に触れるプロダクトだからこそ、触覚のデザインが重要だと感じました。まだまだコンセプトの段階ですが、HAPTIC DESIGN AWARDをきっかけにこれから実現できれば幸いです。
作品部門
そこに寝ると、あたかも戦国時代の合戦場に寝転んでいるかのような感覚を味わえるデバイス。左右のスピーカ、背もたれの裏に設置した振動子で戦の臨場感を再現した。顔にかぶせる笠の裏側に仕込んだLEDの明滅によって頭上を通る兵や馬がおとす影を表現した。
Team at! (花形槙、木許宏美、小笹祐紀、加藤有紀)
慶應義塾大学SFC, A&T
審査員メッセージ
高橋 晋平
株式会社ウサギ 代表
この作品は、触覚で「タイムマシン」を作ったのだと思います。嫉妬するくらい面白いアイデアです。歴史学習にも応用することができるのではないかと考えています。歴史上の事件や戦争はこんなに大変だったんだ、過ちは繰り返すな、という教訓を教える。応用としてマインドフルネスにつかえるかもしれません。HMDの映像体験などではなく、「昼寝」というのが絶妙にいいです。
作品部門
connect project
全国の障がいのある人達が通所している作業所で行われている、※さをり織りの残り糸を結びつなげて、それを有償で譲り受け、更に色々な人達で結びつないでいくプロジェクトです。それぞれの地域で行われるさをり織りの残糸を色々な人が結び、つなげて形にします。アートによってつながっていく、そして多様性を持った未来へと糸をつなげ、新たな価値を創出します。
触覚の抽象表現
そして、この作品には未知の表現が隠されています。それは視覚障がいの人へも伝わる表現です。現在の点字というものがない頃、結び文字というものが存在していました。紐の結び目でいろはを表し、文字として認識する方法です。この作品の結び目に触れることで、もうひとつの未知の表現を体感することができます。ランダムに結ばれた、さをり糸からはどのような、抽象的点字表現が現れるかは視覚的にはわかりません。しかし、点字を読み解くように、触れることでこの作品の未知の部分を感じとることができます。障がいあるなしに関わらず、触覚を通じて伝わるアート。新たなHAPTIC アートとしての価値をデザインして行きます。
※「さをり織り」は、1972年に大阪の主婦、城みさをによって生みだされた最も簡単な「はた織り」のひとつです。 名前の意味は、それぞれが持つ個性・感性を織り込む、つまり「差異を織る」ところから来ています。 「さをり織り」の理念は、「教えないで引き出す」「思いのままに織る」に集約されます。www.artsaori.net/about_sawori.html参照
現在はその簡単さから障がいのある人達の作業として全国で取り入れられている。
大平 暁
Artist
審査員メッセージ
堀木 俊
隈研吾建築都市設計事務所
結び文字の再発見というある種の文化人類学的な視点に、新しさの定義を考えさせられた。
アート作品として範囲を限定するのではなく、人々が環境を理解するためにある環境を主体的に編む技術として発展させることが出来るのではないか。障害の有無に関わらずそれを触ることの楽しさを通じて言語的な何かを理解する魅力的な作品だと感じた。
人が持つ独特な言葉の訛りやリズムが触覚に現れたりすると面白いですね。
アイデア部門
「さわってカルタ」視覚障害者も一緒に遊べるカルタ「さわってカルタ」は自然の中にある様々な質感をモチーフにしたカルタ。視覚障害の子供でも遊べるように読み札に点字表記を入れた。さらに、取り札を全て真っ白にして、肌で感じることを分かりやすくした。読み札の言葉は「ちくちく」「ぷよぷよ」などその言葉から質感をイメージできるような言葉にした。「擬態語」という日本語特有の表現を遊びながら学べる工夫をし、身の周りの面白い質感の気付きのきっかけを作りたい。「さわってカルタ」を通じてコミュニケーションの輪を広げ、「健常者」と「障害者」の区別がない世の中を作りたいという思いで考えた。
藤川 美香
クツワ株式会社 商品開発部
審査員メッセージ
川村 真司
PARTY エグゼクティブ
クリエイティブ ディレクター
ハプティクスを活かした新しいゲームという共有体験をデザインしている点を評価しました。Bruno Munariの絵本や、麻雀の盲牌をちょっと思い出しましたw もう一歩ゲーム性自体にもハプティクスならではのアイデアがあるとさらに良かったかなと思います。
アイデア部門
HAPTICがモノに備わると、人はそのモノに愛情を感じると思う。
どんなに普段煩わしいモノでも見た目からも分かる生っぽい触感・HAPTICは人の所作を変えるのではないだろうか。雨の日、使用済みの傘のビニール袋が乱雑に捨てられているのを見て、どうにかできないかと思った。へたへたに重なったビニール袋は悲しげに見え、使い捨て感が凄かった。原因は雨の日の鬱陶しさだったり、びちょびょに濡れたビニール袋の抜きとりにくさにある。そんな傘袋に赤ちゃんのような生っぽい手をつけてあげることで、抜きとりたくなる、触れたくなる感情と抜き取りやすくなる機能性を引き出した。傘から滴る雨水を利用して生まれる、生っぽい手の触感が人の所作を変える。
松本 祐典
博報堂 プランナー
審査員メッセージ
南澤 孝太
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科(KMD) 准教授
雨の日に傘袋を使うといつも、底に溜まった水をムニムニしてしまう。そんな、なぜか気持ちよくて癖になってしまう何気ない行動に焦点を当てて、思わずニヤリとしてしまうような小さな楽しみを日常に加えてくれる、ユーモアのあるHAPTIC DESIGN。
作品部門
hapbeatは全く新しい音の表現ができるデバイス(体感音響装置)です。音を振動に変換し、体に直接伝えることで、音を振動として触覚で体感することができます。音楽鑑賞に使用することで、まるでライブ会場やクラブハウスで音を浴びているかのような臨場感を感じることができたり、映画鑑賞やテレビゲームに使用することで、あたかもその世界の中に入り込んだような没入感を体感することができます。
hapbeatは主にモータと糸で構成されています。モータに糸を巻いたリールが取り付けられており、ゼンマイにより糸を体に巻きつけ、その糸をモータの回転により伸縮させることで振動を体の広範囲に伝えることが可能です。
hapbeatの特徴はその独自の振動生成方法によって表現できる振動の幅がとても広いことです。
従来の小型なリニアバイブレーター(iphone7などに入っている振動子)が苦手な低周波帯について、hapbeatは1Hzから知覚するのに十分な出力で再生することが可能なほどの優れた低周波特性を持ち、かつ数百Hz程度のリニアバイブレーターが得意な領域についても十分に繊細な振動を再生することができます。
hapbeatはその体験の分かりやすさゆえに様々な可能性を秘めたデバイスです。是非手に取って体験していただき、hapbeatが描く新しい未来を思い描いてみてください。
山崎 勇祐
Hapbeat合同会社 代表社員
審査員メッセージ
高橋 晋平
株式会社ウサギ 代表
新しい音楽の楽しみ方を作れる可能性を感じます。ベルトやファッションアイテムと融合することで、新たな音楽周辺機器を商品化し、イヤフォンと合わせて、将来の必携デバイスにできるかもしれません。近年は動画やライブ映像と合わせて音楽を楽しむ習慣が増えているので、このようなデバイスで、さらに臨場感のある音楽視聴ができたら、すごく楽しそうだなと思います。
作品部門
「マスク依存症」という言葉があります。そこには、覆いを被せて他者とのコミュニケーションに距離をおきたいという心理があるようです。しかし、覆うという行為にはもう一つの作用があります。それは、匿名性により理性が緩み普段は心の奥に抑圧されている部分が露呈しやすくなるということです。「自分自身を隠し心理的な安寧を得る為のお守りのような存在」として。そしてもう一つは「本来の自分自身の中にある本性をさらけ出すための存在」としてのカバー。これらは人それぞれ全然違うかたちをしているはずです。覆うという行為によって顕在化される人の中にあるアンビバレンスをテーマにCOVERシリーズを制作しています。
黒田 恵枝
美術家
審査員メッセージ
大屋 友紀雄
クリエイティブカンパニー
NAKED Inc. プロデューサー
安部公房「箱男」にも通ずる感覚。質感による自己実存の隠蔽、他者からの視線を、質感によって誤認させるというところが面白い。一方で、守るべき内面のグロテスクさを、異なるグロテスクさで、外面に表出することで、他者による自己への認識の位相をずらすという、二重三重に認識が交錯していくというコンセプトが秀逸でした。
作品部門
WIMは暗黙知的な身体の動きの情報を直接身体に共有(ダウンロード・アップロード)できるスーツです。人工筋肉をベースとしているため、動きのデータを送ることによってその動きを再現するように各関節部分・胸部分に伸縮および振動が起こり、装着している人に動きを直感的に伝えることができます。衣類のようにソフトなため日常に溶け込むデザインが可能であり、リハビリテーション、アスリートやダンサーなどのモーション・ラーニング、さらには高齢者向けのアシストスーツとして活用できます。また、追加での開発として、リアルタイムで複数人への動きの共有、動きの録画機能、人々が身体の動きの情報を売買するWIMプラットフォームを構想しております。
亀井 潤、ケイト・マックケンブリッジ、ジェイコブ・ボースト
Royal College of Art
審査員メッセージ
川村 真司
PARTY エグゼクティブ
クリエイティブ ディレクター
ハプティクス・デザインというと必ずウェアラブルなデザインが想起されます。これはその中でも収縮によって筋肉の運動を制御する事を通して、新しい運動の共有の仕方を作るということにフォーカスしているのが面白いし、またデザインとしても「着ても(そんなに)恥ずかしくない」し機能的な説得力があると感じました。
アイデア部門
【子育てママを遠隔ポンポンでお助け!】
赤ちゃんを寝かしつける時、背中をポンポンと触り、安心させることがよくありますが、実際ママは忙しく、その時間に電話したり、料理を作ったりしたいなんてことがあると思います。当アイテムは、赤ちゃんをある程度寝かしつけた後、ママを次の行動に移すことを可能にします。
家事をしながらエプロンのポケットをポンポンと触ると、遠隔で赤ちゃんの背中にもその振動や感触が伝わります。
赤ちゃんに安心感を与えるとともに、お母さんを行動的にも精神的にも開放させることができるアイテムです。
代田ケンイチロウ
ARATANAL IDEA/CONCEPT/STORY/COPY
審査員メッセージ
泉 栄一
MINOTAUR
ディレクター/デザイナー
離れたところにテンポの個性を送ることができる実用性が伝わりました。繊細な赤ちゃんを目で監視するのではなく、触覚で確かめ合うコニュニケーションから、安心感が生まれ、互いを思いやる気持ちが高まる感性に対して切実になれる心の対話モバイルであると思いました。
アイデア部門
「身の回りのものに触れるとき、どれくらい腕をのばせば良いか。」私たちは自己と外界との空間関係を無意識に認識し身体を動かしています。この身体感覚がボディイメージです。 本アイデアは先天性上肢欠損の人に向けた、ものを触る・握る・押さえる等の身体的実感を重視した義手デザインの提案です。「骨格的にあるはずだったウデ」を模すのではなく、ユーザーが生後培ってきた「ボディイメージでのウデ」の長さの義手をつけることによって、ユーザーが元より持つ触覚をよりシームレスに拡張する事が可能になると考えます。
竹腰 美夏、今井 剛
NPO法人Mission ARM Japan
審査員メッセージ
渡邊 淳司
NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 主任研究員
身体拡張や身体補完を実感の伴う形で実現するためには、心の中の身体「ボディイメージ」に基づいて設計が行われるべきである。そんな当たり前だが、忘れられがちなデザイン原理に立ち戻らせてくれる秀逸なアイディア。
作品部門
従来では、単一の物理場のみを使用し触覚提示をしていますが、私達が製作した作品は、複数の物理場を組み合わせて触覚提示を行っています。本作品では、磁性流体と静電吸着を組み合わせています。磁性流体は磁場を与えることにより粘度が変わる液体であり押し出す力を、静電吸着は電気をかけることにより指と画面に引っ張る力を発生させます。さらに本作品では抵抗感、柔らかさ、振動などの触感を表同時に提示することができます。同時に提示することで、素材のテクスチャ表現や、生き物や心臓などの質感表現が可能になります。これらの質感を提示する技術は、教育現場や医療現場に応用することが期待されます。
橋爪 智
筑波大学デジタルネイチャー研究室
審査員メッセージ
大屋 友紀雄
クリエイティブカンパニー
NAKED Inc. プロデューサー
CG表現でも長らく苦労したように、「柔性」を人工的に生み出すのは難易度が高いと考えています。そのような「柔性」を、触覚と触覚のクロスモーダルによって実現しようとするアプローチに大きな可能性を感じました。触覚にも(不気味ではないにせよ)谷のようなものがあると考えており、その谷をどのように超えるか、という研究は、これからのHapticsDesignにとって重要であると思います。