The Third Thumbは、足でコントロールできる3Dプリンター製のもう一本の親指。人の身体と人工装具テクノロジーの関係に新たな光をあてる作品です。また、これは道具であり、経験であり、自己表現であり、人間の人工的機能拡張への反応を理解するための興味深い実験でもあります。
The Third Thumbは、「能力」という言葉の定義についての議論を刺激するでしょう。「prosthetic」(義肢)の語源である「prosthesis」という言葉は「加える・乗せる」という意味を持ちます。「直す・交換する」のではなく、「追加・拡張する」ことなのです。このプロジェクトの目的は、親しみやすく手頃なデザインを通して人間の機能拡張の意味を、社会に考えさせる触媒となり、人工装具とは何かを問いかけることでなのです。
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The Third Thumb is a 3D printed thumb extension for your hand, controlled by your feet. The project investigates the relationship between the body and prosthetic technology in new ways. It is part tool, part experience, and part self-expression; a model by which we better understand human response to artificial extensions.
The Third Thumb instigates a necessary conversation about the definition of ‘ability'. The origin of the wor ‘prosthesis’ meant ’to add, put onto’; so not to fix or replace, but to extend. The project aims to question the perception of prosthetics by becoming a catalyst for society to consider human extension; framed in an approachable, accessible design.
http://www.daniclodedesign.com/thethirdthumb
太刀川 英輔
NOSIGNER 代表 /
慶應義塾大学大学院SDM特別招聘准教授
「触覚のデザインとして重要なものは何なのか?」を考えさせられたアワードでした。それは、プロダクトを選ぶときに、触覚的な体験がすごく重要なのにも関わらず、デザインがこれまであまりに視覚的に捉えられてきたからでもある。選出されなかった作品のなかには、他のアートやデザインの領域であればグランプリ級の作品もありました。今回は触覚的な体験を生み出すことによって、産業の進展や身体の拡張など何かしらの領域を進化させる作品が評価されたと思っています。今後この領域で求められるのは、触覚技術を、視覚的触覚性とともにプロデュースできる力だとも感じた。いい触覚体験を作れるのであれば、いい視覚的デザインもできなければもったいないんです。
水口 哲也
Enhance 創業者 & CEO / 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 特任教授
実際に触れる体験だけでなく、触感を喚起させたり、触覚を刺激する共感覚的な体験をデザインする作品も多く、近い将来さまざまなテクノロジーと結びつきながら、これまでにない新たなものが生まれてくる可能性を非常に感じたアワードでした。個人的には、かたちのある作品ではなく、活動のプロセス自体に触覚を喚起させる作品を評価しました。社会とのつながりや社会との物語を触覚的に紡ぐ作品を今後も期待したいとのメッセージを込めています。
廣川 玉枝
SOMA DESIGN クリエイティブディレクター / デザイナー
作品の質が高く、個人的にも新たな視点が切り開かれたアワードでした。HAPTIC DESIGNは、感覚をダイレクトに刺激し合うことができるという面で、コミュニケーションの幅を広げる可能性のあるデザイン領域だと感じています。触れてみたい使ってみたいという欲求を喚起させることが出来る。すでにみんなが持っている感覚を新しい言語に変換するアプローチに面白さを感じましたし、感覚を新たに呼び覚ますような作品を評価しました。