2019.01.29

エンターテイメントにおける触覚コンテンツの可能性を語る

〜ゲスト:梶本 裕之、川口 貴志、横山 諒/ホスト:南澤 孝太〜

“わざ”にフォーカスし、Haptic(触覚)の研究やデザインに携わる方々をゲストに開催するシリーズイベント「Haptic Design Meetup」。2017/9/4に実施したVol.3は「Haptic ×(Entertainment)Design」をテーマに行いました。

イベントのオーガナイザーである南澤孝太氏をホストに、梶本 裕之先生(電気通信大学)、川口 貴志氏(株式会社CRI・ミドルウェア)、横山 諒氏(ソニー株式会社)を交えて行われたクロストークの模様をお届けします。

触覚コンテンツを制作し、実際にイベントや研究のデモンストレーションで、体験者の反応をリアルに感じてきたゲストの方々にエンターテイメントにおける触覚コンテンツの可能性を語っていただきました。目からウロコの様々なノウハウが語られる濃密な時間となりました。
※ぜひDESIGNER’S FILEの「川口 貴志氏」、「横山 諒氏」、「梶本 裕之先生」の回をご覧の上お読みください。

肩書は2017年9月4日登壇当時のものです。

 

エンターテイメントにおける
触覚コンテンツの可能性

くろすとーく1

ー左から川口 貴志氏、横山 諒氏、梶本 裕之先生、南澤孝太氏

(南澤)今回はエンターテイメントにおける触覚デザインの取り組みをテーマにゲストの方々からお話をいただきました。お話を伺っていると、お三方に共通する要素が多い印象を受けました。川口さんからは物理じゃなくて感覚をデザインするということ、アクションと連動することや、いかにうまくユーザーに対して「うそをつく」かということ。ユーザーにとって都合のいい解釈を生み出すかっていうところが、実はデザインの肝だよというお話をいただきました。それと同じようなところでは、梶本先生のほうから、いかに感覚をクロスさせるかという話、これに関しては横山さんのほうでも、いかにその映像や、音、あるいはコンテンツのコンテクストみたいなところと触覚を組み合わせていくべきかというお話をいただいて、かなり共通する要素があると感じました。その梶本先生のところで、勘所と表現されていた、「大画面性」、「高時間応答性」、「低コスト化」という部分は、非常に実は共通認識として存在するんだなと感じました。登壇者の方々がお互いに気づいたところなどあれば、お話を伺えたらと思います。川口さんのほうから、ほかのお二方の話から何か発見した部分だったり、あるいはもうちょっと聞いてみたいということはありますでしょうか?

南澤孝太氏の画像

南澤孝太氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)

(川口)サウンドデザイナーとして一番気になったのは、骨振動の部分です。例えばVRで花火のコンテンツを作ったとして、ヘッドホンの音だけだと、おなかに響いてくれないということが実体験としてあります。そのために身体に振動を提示するデバイスをわざわざ用意するというのもなかなか大変だったりします。骨振動で、上半身に振動が与えられるというお話があったので体験したことはないんですが、上半身に効くのであれば、臨場感ある体験を比較的簡単な設備でつくることができるんじゃないかと思いました。

(梶本)はい、できます。ただ、花火ですよね、実は、花火だと先ほどの布団圧縮袋がおすすめでして。(笑)

発泡ビーズの振動伝搬による広範囲触覚ディスプレイ

発泡ビーズの振動伝搬による広範囲触覚ディスプレイ。布団圧縮袋が使用されている

(川口)あれですか。

(会場)(笑)

(梶本)実はあの体験のキラーコンテンツは「体花火」という作品だったんです。学生が作っていたんですが、それはまさに花火が打ち上がって、バーンとなった瞬間に体に振動が来るというコンテンツでした。つまり、少し遠くの花火が打ち上がって光って、そのあと、ちょっと時間差をおいて体に振動を感じるというコンテンツを作ったら非常に受けがよかったんですね。

(川口)そうなんですね。骨振動を使ったアイデアで面白そうだなと思ったのが、音の高さによって体の振動する部分が違うことと組み合わせることですね。音量が大きかったり、低い音はおなか辺りに感じると思うんです。例えばライブでバスドラムの音って結構おなかに来ますよね。逆に甲高い声は頭の上から聞こえるということがあって、自分の中では足元が50ヘルツとして、200、500、1000、3000、8000とどんどん体の上部に上がっていくイメージがあります。それをシミュレーションしてあげると、体験としてはすごく面白いかなと思います。

(梶本)それはいいアイデアだと思います。まず、低いところに低い音がきて、高いところに高い音がくるっていうのは、物理的にもそうなので、実際そうすると自然だっていうのはよく言われますね。さっきの骨振動のほうで言いますと、実は、提示したときに、体の表面で下のほうまでちゃんと伝わるのは50ヘルツぐらいの低い音なんですね。高いほうだとやっぱり途中で減衰して消えてしまうので、そういう意味では自然にそういうフィルタリングができているんだと思います。

(川口)すごく興味深いお話をありがとうございます。

(南澤)次は横山さんにお聞きしたいのですが、ハプティックベッドとおっしゃってたようなベッド型だったり、椅子型だったりで、全身に提示するというのは、確かに運用としてはすごく大事だと思います。僕らもSynesthesia suitの運用はものすごく大変で、お客さんに着てもらうのに1人10分ぐらいかかってしまうんですよね。なので、椅子を作ったり、ベッド作ったりできないかなって言ってたんですが、そのときは断念してしまいました。コンテンツ上で実際に当たってる部位ではないところに違和感なく触感を提示することができるとかなり可能性が広がるんじゃないかなと思います。

映画「アングリーバード」とコラボレーションして作成されたデバイス

映画「アングリーバード」とコラボレーションして作成されたデバイス。寝転がることでベッドと密着し、全身へ触覚提示することができる

(横山)あの手のやつって、結局どこに触覚提示したらいいのか最適解もまだわかってなくって、感じやすい周波数とか最適な位置とかも、もしかしたら算出できるかもしれないなと思いました。

触覚における「BGM」と「効果音」

(南澤)梶本先生のほうから、現場でデモをする際に感じることはありますか。

(梶本)私はゲームをほどんどやらない人間で、申し訳ないんですが、お話を伺っていて、「効果触覚」しか存在し得ないのかということはすごくお聞きしたいと思いました。というのは、私の素人考えだとゲームの中の音って、「BGM」と「効果音」があると思うんですね。要はBGM的にちゃんと緩やかに情動をある方向に持っていくっていうのと、効果音的に例えばユーザを驚かすことを目的としたサウンドデザインということがあると思うんです。今のところ触覚の使われ方は基本的に効果音側だと考えられます。昔、ちょっと考えたのが、触覚がBGMのように、例えば触覚だけで感動するとか触覚だけで悲しいとか、そういうことはあり得るのかなと思ったんです。触覚だけで安らぐはあるんですけど、ただその安らぐ側ってやっぱり、ある種の圧迫感からであって、振動提示でなかなかそれが起きないなと思っていて、そういう意味で、効果音的な使われ方っていうのは、今後も変わらないのか。それとも私の知らないだけでいろんな考え方、やり方があるのかご意見いただけたらと思います。

梶本 裕之先生(電気通信大学)

梶本 裕之先生(電気通信大学)

(川口)ゲームの音の考え方って、いろいろあると思うんです。例えば、タイムアップが近づいたときに、緊張感を出すために用いたりとか、あとは感情をコントロールするためにBGMで癒やしてあげたりなどが代表的でしょうか。これらを設計する際に大切なのは「メリハリ」です。例えばBGM的に使用するとして、常に振動してると、驚かせたいと思ったときに、刺激の差が少なくなり、驚かせることができない可能性があります。ですので、もし自分が驚かせるとしたら、映画の音作りなどでよく表現される手法ですが爆発する直前に無音にするのと同じように、びっくりさせるちょっと前に振動を止めて、そこから振動を提示する。そのようにダイナミックレンジをなるべく広くしてあげることが大事かなと思います。ただ結局、何が正解かわかってないので、いろいろ試行錯誤することが必要かと思います。

「納得感」の設計方法

(南澤)ありがとうございます。横山さんいかがですか。

(横山)僕は例えば音と映像がないことが、触覚提示において逆にリアルみたいなシチュエーションもあるかなと思っています。本日デモで持ってきたハプティックボールでも、ラバーや金属のボールが転がるコンテンツがあるんですが、無音で壁にぶつかるモードがあります。音が鳴らないことがリアルみたいなシチュエーションだと、そういうのもあり得るのかなと思ったりします。あとは、今後のトレンドの話になってしまうかもしれないんですが、触覚って一度体験すると、ないときにつまんなく感じてしまうということがあって、それが例えば、昔は音がないテレビが当たり前だった頃から技術が進んで音があるのが当たり前になったことにも通じるところがあるんじゃないかなと思っています。触覚も、触覚がないと嫌っていう人口が増えていけば、それは当然、効果音的なものではなくって、もう圧倒的になくてはならないものになっていくのではないかと思います。

横山 諒氏(ソニー株式会社)

横山 諒氏(ソニー株式会社)

(南澤)ノーマルな状態にある触覚というのを考えると、例えば服を着てたり、椅子に座ってたり、立ってたりって、触覚的には刺激はきてるはずなんだけれども、基本的にはそこが感じられなくなるというか、ゼロになるっていうのが実はノーマルの状態で存在していて、それを逆にそのゼロをいかに設定するかということが、触覚でこれからすごく大事になってくると思っています。装着ができたときとかそう思ったんですけど、着るということ自体が、触覚インターフェースの場合、実はすごくノイズになるんですね。着てるっていう重さだったりとか、着てるっていう装着の皮膚の感覚そのものが、実は常にノイズサウンドが、ザーっと鳴ってるような状態になっちゃってて、これをいかにゼロにするかというデザインは、もしかすると、これからものすごく大事になってくるのかなっていう気がします。既に今のハプティックベストだったりで工夫されてるところってありますか?

(横山)そういう意味ではどうなんでしょうか。着てるうちに気にならなくなるっていう方が結構いらっしゃるので、コンテンツに没入するだけの、何かコンテンツ力みたいなものがあると、そこがうまく補完できるのかなと思ったりします。あと、僕らリアリティを実現しようとしている一方で、ゾンビ体験を例に上げると、正直、実世界で食われる側を体験したことないんですよね(笑)。なるべくリアルに感じるように体験設計をしていますが。

(会場)(笑)

(横山)お客さんから「すごく食べられた感じがしました」っていう感想が聞けたりするとうれしいんですけどね(笑)。

(会場) (笑)

(横山)川口さんのお話しにもありましたが、触覚によってリアルじゃないのにリアルに感じさせるということを補填させることができるなって感じましたね。

(川口)そうですね、何か自分も、例えばホラーで触覚、VRとかやるんだったら、手をここまで、心臓を抜き出されるぐらいまでやってほしいんですけど、それってやっぱ、体験できないじゃないですか。リアルに体験するのはちょっと1回死ぬしかないみたいな。それを達成するには、やっぱりうそをうまくつく必要があるということは、常々思ってますね。

川口 貴志氏(株式会社CRI・ミドルウェア)

川口 貴志氏(株式会社CRI・ミドルウェア)

(梶本)リアリティっていう言葉を使っちゃうと、本当のリアルと対峙しなきゃいけなくなっちゃうんですけど、結局、狙ってるのは「納得感」なわけですよね。だから「リアリティ」と「納得感」ってのは非常に実は近いものなんだと思います。

(川口)納得感という言葉はすごくしっくりきました。自分はよく「説得力」って言ってるんですけど、すごく近いのかなって。

(横山)人の期待に応えるっていうこともあるかもしれないですね。先入観とか人がこうだろうなって思ってることにちゃんと応えてあげると。

(川口)あとはその関連するほかの記憶を想起させることが大事だと思います。例えば日本人だとセミの声が聞こえたら、ああ今は夏だって思う。雨の音が聞こえたら、もちろん雨降ってるって思いますよね。結局、その人が持ってる知識とか、経験、体験してる中の何かを呼び覚ますことが重要だと思います。そのトリガーは別に音でも振動でもいいんですけど、そういったアプローチをしていくと、納得感っていうのが高めやすいのかなと思います。

(南澤)確かにそうですね。僕らもテクタイルツールキットを作ったとき、最初にやったのは、コップにボールを入れるっていうのだったんですけど、やっぱりそれがコップであることがものすごく大事で、それを積み木の四角い箱にした瞬間に、全然面白くなくなる。だからやっぱりそれがそれであるっていうコンテクストを人に与えて、そのコンテクストの中で梶本先生がおっしゃるような、時空間的な一致、モダリティの一致っていうのがきちんと実現することが大事で、全部がものすごくたくさん情報量を持ってる状況は多分ないんですよね。

TECHTILE toolkit

触感を用いた表現のためのラピッドプロトタイピングツールとして開発されたTECHTILE toolkit

(南澤)さっき梶本先生のBGMみたいな触覚、その触覚の抑揚とかそういったもので、何か感情だったりとか、楽しさだったりとか、そういったものを演出することができないかって話、前のこのMeet upでもやっぱり話題になって、なかなか解が出てない話ではあるんですけれども。エフェクトを超えて、触覚自体で何かを積む、ちょっとロングタームの体験を積むことってできるのかなっていうのは、今、VRでも課題になっています。VRは5分の体験はできるんだけど、映画みたいな2時間の体験はできるのかといういうのは、すごく課題になりつつあるんです。だから横山さんの「超体感ステージ『キャプテン翼』」で2時間やられたと伺って、ちょっとびっくりしたんですけれども。

(横山)あれは、本当に2時間ぶんの触覚コンテンツを作ったんですけど、あれは完全に肉弾戦というか。

(一同) (笑)

触覚コンテンツにおける人称問題

(南澤)まあ、そうなんですね。コンテンツがコンテンツだしっていうところもあると思うんですけど、普通に出してくと後半になるにつれて触覚的にだれてくるんじゃないかなって思うんですね。何かそこに工夫したポイントとかはあるんですか。

(横山)一つはさっきのノイズっていう話じゃないんですけど、やっぱりずっと服着てると、服を感じなくなることと似てると思うんですが、だんだん触覚慣れするということがあって、逆に、何もない状態から一気に触覚提示すると、これはあの触覚だっていうのが、はっきりわかるんですよ。なので、2時間のスタート直後はちょっと弱めにしといて、後半になるにつれて、だんだんと強くしていくということも大切かなと思います。

(南澤)中毒みたいに(笑)。

(横山) そうです(笑)。ボリューム上げていくっていう、単純なテクニックもあるんですよね。

(南澤)でも起承転結みたいなストーリーもあるんですよね?

(横山)そうですね。

(南澤)その触覚のエフェクト自体も、何かそこで変わってったりするんですか。

(横山)そうですね、音楽のリズムを感じるっていうシーンがあったりするんですけども、それを全身で感じるときに、割とパターンを変えたりはしています。あと、今回の舞台で完全にできたかはちょっと自信がないんですけども、やっぱり一回、触覚を体験すると、例えば翼くんが足を振ったタイミングで、蹴った感覚を体験してしまうと、どうしても、それ以降触覚がなくなると寂しくなります。

(南澤)(笑)。そうか2時間あると、どんどんハードル上がってくんですね。

(横山)そうなんですよ。それはわかりつつも、2時間もあると、多分、1,000回ぐらいキックあるんですけど。
(一同) (笑)

(横山)全部つけきれなくって、そこの満足感っていうのは、完全にはちょっと達成できなかったなとは思っています。

(梶本)触覚をコンテンツの中で使うときの、難しいポイントだと私が思うのは、人称の問題です。要は自分自身の体験として感じるものなのか、それとも、その場の映像として感じるものなのかということです。私がよく例として出すのはチャンバラの話なんですけど、チャンバラ映像に触覚を合わせたと仮定したときに、主人公が敵を切る感覚を出すべきか、チンピラが切られた感覚を出すべきかという疑問があります。人称として完全に切られる側の体験を出したら、切られる側に観客は感情移入しますよね。それぐらい触覚は、使いどころが難しいなと思います。特に舞台では。

(横山)激ムズですね。初めは、翼くんが1人でタッタッタッみたいな感じなんですけど、もう後半になるにつれて、5人ぐらいが一気にパス回し始めるんです。

(会場)(笑)

(梶本)今、面白いことを思いついたんですけど。よくアイドルグループで誰々押しってあるじゃないですか。

(横山)あります。

(梶本)だとしたら、押しの人の触覚だけをその人が体験するようにすればよくないですか。

(横山)実は、初めは出演者のファンの方が多いこともあって、誰々くんの触覚っていうのも考えたりはしたんですが。

(梶本)あったんですね。

(横山)そういうのも考えてたりしたんですけど、そこまではできず。5人ぐらいのパス回しのときは、BGMが流れていたので、その音楽に合わせました。

(南澤)4DXの映画とかでも、その辺、うまくいってるときといってないときで全く印象が変わってくるわけですよね。今はやっぱりそれこそオリンピックとかに向けて、スポーツの試合とかの感覚を伝えるみたいなことをやるときもある。これ、同じ問題がどうしても生じていて、いわゆるエンターテイメント、ゲームだけじゃなくっても、いろんなところでその人称問題っていうのが出てくるのかなっていう気がします。
では、質疑応答にまいりたいと思います。

質疑応答

(男性A)本日はお話ありがとうございました。鎖骨あたりからだと上半身が振動を感じやすいってお話と、あと、圧縮袋だと伝わりやすい、素子が少なくても伝わりやすいっていうお話があったんですが、もし簡単に上半身の大きな範囲に振動を提示する体験をしてもらうときに、デバイスを安価に作るものを作るとしたら、どんなものがあるでしょうか?

(梶本)ですから、布団圧縮袋です。

(会場)(笑)

(梶本)あとは、今、ぱっと思いつくのは、例えばバランスボールですね。あれは結構いいかもなって思っています。要はあれに乗っかった状態で、あのバランスボールに振動を提示してやれば、多分、結構いけると思います。先ほどお話があったように、ハプティックベッドとかもそういうことだと思うんですけど、ベッドとか、椅子とか、そういったもの。要はそこに大面積で接することが前提のものを使うことを、まずは考えたらいいのかなと思います。基本的に振動をこの肉というものに伝えるっていう、ある種のインピーダンス問題なので。例えば、空気の層が途中にあったら、振動を提示しずらくなったりします。そういう意味ではちょっと勘所はあるかなとは思うんですけれども。

(男性A)ありがとうございます。

(男性B)興味深いお話、ありがとうございました。質問というより、コメントなんですけども、BGMとしての振動っていうお話、非常に面白くて、ちょっと考えてたんですけど、電車に乗ると眠くなるとか、子どもが車に乗ると寝ちゃうとか、ああいうことで、何か気持ちいい椅子とか、作れるのかななんてことをちょっと思ったりもしました。

(南澤)触覚で安心感を提示することは実現しやすいと考えています。それこそ眠くするは一番、取り組みやすいところかなと思っています。特に子ども相手にやると、かなり効果的に寝てくれたり、あるいは目覚めさせるとか、そういったことは考えられますよね。子どもがすぐ寝てくれるベッドとかを作ったらすごく売れそうな気がします。

(梶本)電動ゆりかごで、よくお母さんのお腹の中の揺れを再現したものなどがありますよ。

(男性B)あるんですね。

(梶本)ただ、電動ゆりかごもそんなに本気なものがあんまりなくって、というか安く作んなきゃいけないからもしれないですけど、一定のリズムで揺らすタイプが多いようですね。

(男性C)ありがとうございました。今、接触系、直接触れるような、触覚、触感の話だと思うんですけど、非接触で風とか、電気とか、そういうふうなものでの触覚提示っていうのは、今後、どういうふうなかたちになっていきそうでしょうか。

(梶本)それは非常に重要だと思います。研究の事例だと超音波がありますね。実は超音波で、ちょっと別の話ですけど、超音波で、音楽を聞くと非常に心地いいみたいな話も昔からあるんですが、あれ実は、体を毛布で覆うと効果ないらしんですね。ですから、あの超音波領域にしたときに心地がよくなるっていうのも、個人的には実はあれは触覚の圧迫感が効いたりしているからではないかと考えています。あとは空気砲とか、そういう非接触系ですね。

(南澤)ほかにありますでしょうか。大丈夫かな。後ろの方。お願いします。

(男性D)お話ありがとうございます。梶本先生の中で、皮膚のほうを虫がはうような感覚を学生が作ったという話がありましたが、例えば体内の中に、内蔵をさわるとか、そういう触覚をやりたいと思ったら、何かそういうようなところで、うまく共振して、その内臓の胃の部分だけ、揺れるような体験はどうすれば作れるのかなと思いながら。

(梶本)昔、そういうことをやったことがあったんですが、いろんなやり方があって、一つはやろうとしてやんなかったのは、そういうカプセルを飲むっていう。

(会場)(笑)

(南澤)それは確かにやったことない。ありかもしれないですね。

(梶本)それこそさっきの納得感の話なんですけど、本当に体内に提示させる必要があるのかを考える必要があります。要はわれわれは体の中の、どこから触覚が生成してるかっていうのを学習する機会がないはずなんですね。ですから、例えば小さい子どもだとおなかが痛いと頭が痛いを区別できないみたいな話がありますよね。ですから逆にいうと、大人になって、何で胃が痛いとか、腸が痛いとか言い出すのか私はよくわかんないぐらいです。ですから、そういう意味で結構だませるはずで、一つのやり方はやっぱり体の表面と、裏面みたいなところで提示してやると、これはそういう感覚かなっていうふうに、思ってくれるっていうのは、想像はつきますね。

(南澤)横山さんのゾンビにおなかぐちゃぐちゃ食べられるやつ、まさにそれですよね。

(横山)まさにそれで、やっぱり前提知識というか、何かその先入観ですかね。今、ゾンビに食べられるんだっていう先入観の元、おなかにぐちゃぐちゃと提示すると、何かそのおなかの中から、振動を感じるような、そういう錯覚みたいなものがあるんだと思います。

(梶本)その手の話で私が面白いと思うのは、頭痛の世界でして、頭痛って頭のこの辺が痛いとか、あと脳みそをつかまれたような感じがするとか、全部何かそういう症状の名前としてあるんですけども、だけど明らかに脳みそのどこかをさわったとしても、脳みそ自体は感覚器を持ってないわけですからわかんないわけですね。ですけどもわれわれはある種のマッピングをして、しかもそれが結構みんな共通だったりするっていうことが面白いですね。もし脳に実際その刺激を与えても何も感じません。

(南澤)確かにそうですよね。

(男性D)ありがとうございます。

(南澤)ありがとうございました。ということで、今回、いろいろなノウハウだったり、お話だったり出てきましたけれども、大面積は正義、時間は合わせよう。そして、ちゃんと実用的に使えるリアリティのある、リアリズムが作れるような楽しい触覚デバイスをきちんと作っていきましょうというところで、エンターテイメントにおける触覚デザインの可能性を少しでも感じていただければと思います。今回はこれにてパネルディスカッションこれにて終了させていただきます。ありがとうございました。

ゲスト

梶本 裕之(電気通信大学 情報理工学研究科 准教授)

梶本 裕之(電気通信大学 情報理工学研究科 准教授)

2003年 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻単位取得退学,2004年博士(東京大学,情報理工学).触覚を中心としたバーチャルリアリティの研究,触覚の医療福祉応用に関する研究開発等を行い,Haptics Symposium,EuroHaptics,SIGGRAPH Emerging Technologies 等における研究発表を行う.日本バーチャルリアリティ学会理事.

川口 貴志(株式会社CRI・ミドルウェア / ゲーム事業推進部 オーディオリード)

川口 貴志(株式会社CRI・ミドルウェア / ゲーム事業推進部 オーディオリード)

ゲーム業界と音楽業界を半分ずつ経験してきた、エンジニア寄りのサウンドデザイナー、ディレクター。1998年よりゲーム会社、ネットベンチャー、音楽制作会社、フリーランスを経て2015年、CRIに入社。ゲームにおける音の演出ノウハウを活かし、主に音響デザインと触覚デザインの研究をしつつ、ミドルウェアのエヴァンジェリストとしてスマートフォンアプリ、VRコンテンツ、配信サービスなど体験の向上に努めている。

横山 諒(ソニー株式会社 / システム研究開発本部 インタラクション技術開発部)

横山 諒(ソニー株式会社 / システム研究開発本部 インタラクション技術開発部)

東京工業大学大学院にて、信号処理・画像処理に関する研究に従事し、2015年ソニー株式会社へ入社。新たな感動体験を創出するため、視覚・聴覚・触覚などのあらゆるモーダルを融合する、インタラクション技術を研究開発している。また、ハプティックデザイナーとしての活動もあり、自社グループの映画コンテンツや、舞台演劇とコラボするなど、エンターテインメントとしての体験価値の具体化に取り組んでいる。

ホスト

南澤孝太(みなみざわ・こうた)

南澤孝太(みなみざわ・こうた)

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科(KMD) 准教授。2010年 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士課程修了、博士(情報理工学)。 触覚を活用し身体的経験を伝える触覚メディア・身体性メディアの研究を行い、SIGGRAPH Emerging Technologiesなどにおける研究発表、テクタイルの活動を通じた触覚技術の普及展開、産学連携による身体性メディアの社会実装を推進。 日本バーチャルリアリティ学会理事、超人スポーツ協会理事/事務局長、JST ACCELプログラムマネージャー補佐を兼務。

※肩書は登壇当時のものです。

TEXT BY KAZUYA YANAGIHARA

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