2017.02.28
審査員が気づいた、語った「HAPTIC DESIGN」で大切なこと
2017年2月某日、触覚のデザインに基づいた新たな体験(モノ/サービス)のアイデア、作品を募集した「HAPTIC DESIGN AWARD」の審査会が行われました。(募集期間:2016/11/19〜2017/2/5)
「思っていた以上に、幅広い作品・アイデアが出ていそうで審査が楽しみ」と、審査員たちも期待を寄せた本アワードは、触覚をデザインしたアイデア、作品を募集したはじめての試みにも関わらず、応募総数はなんと70作品超!
審査基準は4点
審査会では、事前のオンライン審査を通過した34作品をテーブル及び壁一面に並べ、審査員とオーガナイザーによるディスカッションで受賞作を選定しました。※審査員のひとり川村真司さんはNY在住のため事前にオンライン審査で参加
受賞作品の紹介と、作品それぞれへの審査員評価については、こちらのAWARD結果発表ページに詳しくあるため、このレポートでは審査会で審議されたポイントや、アワードを振り返っての審査員とオーガナイザーの気づきを紹介します。
川村真司(PARTY エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター)
応募作品のクオリティがどれも非常に高く、審査をしていてとても面白かったです。触ったか・触ってないかという0か1ではなく、触ったときの感触やそこから生まれる感情や共感といった部分にまで触れているようなアイデアを特に評価させていただきました。プロダクトや体験に「HAPTIC DESIGN」を加味することで、新たな物語やアフォーダンスのレイヤーをモノやデータに加えることができるんだなということを改めて感じさせられました。個人的にも、もっとこの分野で様々な実験をしていきたいなと思います。
大屋友紀雄(クリエイティブカンパニー NAKED Inc. プロデューサー)
今回のアワードを振り返ってはっきりしたのは、HAPTICを使ったデバイスを作るコンテストではなく、HAPTICを使って社会とヒト、モノとヒトなど、さまざまなモノゴトをいかにデザインするかというコンテストだということ。デザインまで落とし込んだ作品は、なかなか難しいんだなと思いました。生活の変化までイメージできた作品、世界の認知を変えちゃうような作品が高く評価された結果になりましたね。
高橋晋平(株式会社ウサギ 代表)
「触覚って何に使ったら一番いいの? どう社会が変わるの?」といった、何の役に立つのか、どんな可能性があるのか、そこまでを意図的に組み込むことが「HAPTIC DESIGN」には必要なんだと改めて認識しました。HAPTICというと、気持ちいい触り心地をまずは発想しがちですが、今回のアワードを振り返り、「HAPTIC DESIGN」はキチンと考えれば、人間の行動、生活、文化を変えてしまうようなすごい力がある!と気付かされました。
泉 栄一(MINOTAUR ディレクター/デザイナー)
審査員の皆さんとディスカッションする中で、新しい視点や新たな評価軸みたいなものがどんどん加わっていく感じがエキサイティングでした(笑)。自分自身の作品を見る視点も成長していく感じがしました。作品を使った体験のストーリーに共感できる作品に評価が集まりましたね。
堀木 俊(隈研吾建築都市設計事務所)
「HAPTIC DESIGN」は、個人の記憶や体験に基いて共感を生む作品が重要である点が、その他のアートやデザインへの評価と異なるポイントだと思いました。テクノロジーだけではなく、人の感覚を呼び起こすものや、すごく抽象的でセンシティブなもの、ひとつの感覚を研ぎ澄ますようなもの、そうした異なる作品がおもちゃ箱のように入り混じり、「HAPTIC DESIGN」の枠組みを広げるような気づきが多い審査会でした。
南澤孝太(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科(KMD) 准教授)
アイデア部門は評価にも紆余曲折の流れがありました。審査開始当初は課題解決型に注目が集まりましたが、それぞれ既に社会の中で実際に課題解決を試みてる事例があり、アイデアだけではかなわない。むしろ、審査員の妄想が膨らんでワクワクできるアイデアのほうがインパクトがありました。今回の審査会での議論の中で、もしかしたら応募者も気づいていなかったかもと思える視点まで俯瞰して見ることができ、応募作をさらに昇華させるアイデアも生まれていきました。なかには生活や文化まで変えるようなインパクトのある作品もあり……、私たちが作ってしまいたいくらいです(笑)。今回の審査員の評価が次の作品の糧になり、実際に社会に実装されるプロダクトやサービスが生まれて欲しいと思います。
・関連リンク:南澤孝太(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科准教授) “体験のデザイン”から社会的価値を想像する、新時代の研究者
渡邊淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 主任研究員)
今回集まった作品の中には大きく2軸、「課題を解決するもの」と、「さらに気持ちよさを追求するもの」があり、とてもバランス良かった。当初は課題解決型のデザインが多く集まるかと思っていたのですが、今回のAWARDを通じて新たな軸ができたというか。いつもなら同じテーブルに並ばないものがHAPTICという文脈を通じて並んでいるのが素敵だなと思いました。単に振動するデバイスというだけではなく、作品を使った体験の”意味付け”みたいなものまで内包する作品が評価されたと思います。
最後に南澤孝太氏がコメントしているとおり、作品を審議するなかで、応募作品の視点にインスパイアされた新たなアイデアや応用アイデアが審査員より続々飛び出し盛り上がったHAPIC DESIGN AWARD。この続きは、3/27(月)に開催する授賞式でトークセッションする予定です。お楽しみに!